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我が国において外科手術後で経口摂取ができない患者には同剤の舌下投与がルティーンに行われていると考えられたために、カルシウム拮抗薬舌下投与後に心、脳における虚血性イベントはどれくらいの頻度が生じているのであろうか等の疑問が生じた。そこで自治医科大学卒業生外科系医師を対象に一次アンケート調査を行った6)。

 

B. 結果

 

108名よりアンケートが回収された(回収率30.8%)(別紙3)。アンケートに答えた医師は卒後3〜18年(10.8±5.0年;mean±s,d.)の臨床経験があった。術後の高血圧に対する処置として1.ニフェジピンの舌下投与99名(91.7%)、ミリスロール点滴15名(13.9%)、その他22名(20.4%)であった(重複あり)。その他の処置として、ニカルジピンの静脈内投与や、利尿剤の使用などが記されていた。これらの医師で術後1週間以内に心筋梗塞、狭心症、脳梗塞を現在までに経験したことのある者は27名(25%)いた。

 

C. 考察

 

このprojectのキーはGHC(GrOup Health Cooperative of Puget Sound)による報告である2)3)。彼らは1986年より1993年までで、降圧薬投与中の高血圧患者で致死的または非致死的な急性心筋梗塞を発生した623例を調査した。コントロールとして年齢、性、等を合わせたGHC登録の高血圧忠者2032例を選び、これと比較検討した。その結果short−acting型のカルシウム拮抗薬で血圧がコントロールされている患者にきわめて高い心筋梗塞のリスクがあったとする報告であった3)。メタアナリシスのバイアスが問題となっているようだが、降圧療法におけるカルシウム拮抗薬支持派とその反対派の論争のような感もある7)。しかしこの反響は大きく、日本の厚生省薬務局も動かざるえなかったようだ。そのおもな理由は、急激な血圧降下による冠血流量の減少のためと考えられている。しかし、外科系では事はもっと深刻である。外科手術後患者で経口摂取ができない場合には著者も含め、ニフェジピンの舌下投与を行っているからである。事実外科の教科書にもその使用法が記載されている8)。もっともニフェジピンカプセルをこわして舌下する方法は保険上は認められていない。一方、諸外国では術中、術

 

 

 

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